★前回のお話はこちら。
「私はあなた、あなたは私、だからよ。」
彼女はそう言った。確かに、僕たちは同じ。そうであるとも言えるし、そうでないとも言える。
そして、正直なところ、彼女が立て板に水の如くつらつらと述べたことは、僕にとって耳の痛いことに、全て、図星だった。
僕は、物書きに、いや小説家になりたい、と思いながら、エッセイのようなブログを書く以外に全くそのような活動をしてこなかった。人生の半ばを過ぎた人間として、社会生活において目の前のなすべきことや個人的にやりたいことに追われて、プロットを考えることさえしてこなかった。いや、正直、小説を書きたいと思っていることすら忘れていて、今彼女の言葉によって思い出したのだ。
しかし、なぜ彼女が僕の夢を知っているんだろう?
僕は、誰にも、小説を書きたいなどと話したことはない。
「どうしてバレちゃったんだろう?って思ってる?」彼女は、また、図星を指した。
「それは、さっきも言ったとおりよ。私はあなた、あなたは私だから。」
「あなたが、時に挫折や紆余曲折あったにせよ、様々な努力や工夫をして社会生活をずっと送り続けて、私たちの人間としての肉体、つまり生命を維持してくれたことには、とても感謝しているの。」先ほどよりも、ややゆっくりと、彼女は語りかけてきた。
「感謝。感謝してくれているんだ。」彼女の感謝という言葉が意外で、それだけではなく、彼女の急に落ち着いた態度や雰囲気が本当に心からの感謝を感じさせることも意外で、僕は、「感謝」という単語を2度繰り返した。
「うん。感謝している。」彼女も繰り返した。
「だって、そのおかげで、私は、この風通しのいい明るくてのびのびできる広さの部屋に住んでリラックスできるし、美味しいご飯やお酒に酔いしれることができるし、海や山や川や温泉、素晴らしい自然の中に行って身体中に新鮮なエネルギーを注入することができるし。」
「何より、あなたはなかなか頭が良くて好奇心旺盛でユニークで、その上、正直で善良で優しい人だわ。」
「善良で優しい人、って言われても、いわゆる『いい人』って言われたみたいで、正直あんまり嬉しくはないけれど。」僕は言った。
「そういう正直なところがいいのよ。」彼女は言った。「一緒に居てくれて、ありがとう。」
さっきまでは僕に対して夢のない意気地のない男だと言わんばかりにダメ出しをしていたくせに、と思いながらも、彼女から誉められて気分は悪くない。そこは認めざるを得ない。そうだ、「正直で善良で優しい」に「単純」も付け加えなければ。
「夢を夢のままにしておけば、諦めないで済む。」ふと、僕は思いついた。思いついた瞬間、口から言葉がこぼれ出た。
「どうやら僕は無意識のうちにそう思っていたのかもしれないね。」
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皆さま、こんにちは!愛し合っていますか?
たまに戦う弁護士の小川正美です。
前回の続きを書きました。新聞小説みたいな気分になってきた(笑)
続きはあるのかないのか・・・・まだ決めていませんが、よろしければご感想など頂けるととっても嬉しいです!